親族内承継を成功させるカギ:円滑な世代交代と遺留分対策
出口戦略シリーズ第4話

親族内承継を成功させるカギ:円滑な世代交代と遺留分対策

はじめに:私たちの事務所について

こんにちは、税理士法人JTS会計です。私たちは、1970年に石川県金沢市で創業した会計事務所です。2022年に金沢市増泉へ移転し社名も新たに、長年の経験で培った豊富な知見を基盤としながら、最新のクラウド会計ソフトも積極的に活用し、お客様の多様なニーズにお応えしています。日頃の会計業務はもちろん、実績豊富な相続税申告や税務調査対応もお任せください。16名のスタッフが、皆様の経営を力強くサポートします。

はじめに:最も身近で、最もデリケートな承継のかたち

経営者の皆様にとって、心血を注いで育て上げた会社を誰に託すかは、経営人生の集大成とも言える重大な決断です。数ある「出口戦略」の中でも、我が子や親族に会社を引き継ぐ「親族内承継」は、今なお多くの経営者にとって最も自然で、魅力的な選択肢であり続けています。

創業の想いや経営理念を深く理解してくれる親族に後を託すことは、長年連れ添った従業員や取引先にとっても安心感があり、会社の文化や暖簾(のれん)を維持しやすいという大きなメリットがあります。

しかし、その一方で「身内だからこそ」の遠慮や甘え、逆に感情的な対立が、円滑な承継を阻む大きな壁となるケースも少なくありません。親族内承継を成功に導くには、経営者の想いだけでなく、法務や税務、そして人間関係まで含めた周到な「計画」が不可欠です。

今回は、円滑な世代交代を実現するための具体的なステップと、親族内承継における最大のハードルとも言える「遺留分」対策について、詳しく解説します。

円滑な世代交代を実現する3つの重要ステップ

事業承継を成功させる社長は、勇退を決意してから準備を始めるわけではありません。会社の未来を見据え、10年、15年という長いスパンで計画的にバトンタッチを進めています。その具体的なステップを見ていきましょう。

ステップ1:後継者の選定と「帝王学」の実践覚悟を育む時間

後継者を決めたら、具体的な育成計画に移ります。この過程で現経営者に求められるのは「任せる勇気」と「見守る覚悟」です。自分がやった方が早いと手を出したくなる気持ちを抑え、失敗するリスクごと後継者に権限を委譲していくことが、後継者を本当の意味で経営者として成長させます。また、決算書だけでは見えないリアルな資金繰りや金融機関との交渉術、そして重大な「決断」の重みといった「帝王学」を語り継いでいくことも不可欠です。

ステップ2:会社の魂を伝える「理念の承継」羅針盤を渡す

会社の歴史に刻まれた価値観や想いの結晶である「経営理念」は、変化の激しい時代を乗り切るための羅針盤です。「言わなくても分かるだろう」ではなく、現経営者の言葉で情熱をもって語り、後継者と深く対話する時間を意識的に設けることが重要です。後継者がその理念を自分なりに咀嚼し、新しい時代に合わせた未来のビジョンを語れるようになってこそ、会社は永続的に発展していきます。

ステップ3:社内外の信頼を勝ち取る「戦略的お披露目」新たな船出の演出

後継者の育成と理念の承継が進んだら、最終段階として、社内外のステークホルダーに次期経営者として公式に紹介し、信頼を勝ち取っていきます。従業員の不安を払拭し、金融機関や取引先に「安心」と「期待」を届けるため、周到なコミュニケーションプランに基づき、現経営者と後継者が一体となって丁寧な説明を行うことが、円滑なバトンタッチを盤石なものにします。

事業承継における複合的な課題

さて、これまで見てきたようなソフト面の準備がいかに重要であるかご理解いただけたかと思います。しかし、多くの経営者はそれと同時に、あるいはそれ以上に、具体的で現実的な課題に直面しています。中小企業庁の中小企業白書の調査資料等を基に、事業承継における経営者の主な課題を円グラフで見てみましょう。

このグラフが示すように、「後継者の育成・確保」が最大の課題である一方、「相続税・贈与税の負担」といった税金の問題や、「借入金・個人保証の引継ぎ」、そして「親族・従業員の理解」といった財務・人間関係の調整が大きな割合を占めていることがわかります。

円滑な関係構築と並行して、こうした法務・税務面の対策を怠ると、思わぬ落とし穴にはまることになります。その中でも特に深刻な問題に発展しやすいのが、次のセクションで解説する「遺留分」です。

親族内承継最大の壁:「遺留分」という落とし穴

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された、最低限の遺産取得分のことです。例えば、経営者が「会社の全株式を後継者である長男に相続させる」という遺言を残しても、他に相続人(妻や他の子など)がいれば、その相続人は遺留分を請求する権利があります。

中小企業の財産の多くは換金しにくい「自社株式」です。そのため、後継者が他の相続人から遺留分として高額な金銭の支払いを求められ、会社の経営権を維持するための資金繰りに窮するというケースが後を絶ちません。これが「遺留分」の恐ろしさです。

今からできる具体的な遺留分対策

このような事態を避けるため、経営者が元気なうちから計画的に対策を講じることが極めて重要です。

  1. 生前贈与の活用: 暦年贈与や相続時精算課税制度といった税制上の特例をうまく活用し、計画的に自社株式を後継者に移転させていきます。
  2. 生命保険の活用: 経営者を被保険者、後継者を受取人とする生命保険に加入し、他の相続人へ支払う代償金や納税資金を準備します。
  3. 遺留分に関する民法の特例: 他の相続人全員の合意を得て家庭裁判所の許可を得ることで、遺留分の算定基礎から自社株式等を除外したり、その評価額を固定したりできます。
  4. 想いを伝える遺言書の作成: 法的に有効な遺言書に加え、「なぜ後継者に株式を集中させる必要があるのか」といった想いを付言事項として記すことで、円満な合意形成を促す助けとなることがあります。

おわりに

親族内承継は、会社の歴史と未来を繋ぐ、価値ある選択です。しかし、その成功は周到な準備にかかっています。特に、相続というデリケートな問題が絡むため、法務・税務の専門知識なくして円滑に進めることは困難です。

本日のことわざ

「遠き慮りなければ、必ず近き憂いあり」

このことわざが示すように、将来を見据えた早めの準備が、後になって起こりうる大きな問題を未然に防ぎます。後継者問題や遺留分対策は、決して先延ばしにしてはいけない経営課題なのです。

弊所では、経営者の皆様が人生を懸けて築いてこられた大切な会社の未来づくりを、全力でサポートいたします。まずは会社の健康診断とも言える「現状の見える化」から始め、企業価値の評価、親族承継・従業員承継・M&Aといった多様な選択肢の検討、そして円滑な引継ぎに向けた事業承継計画の策定や節税対策まで。専門家として皆様に寄り添い、共に最適な航海図を描くお手伝いをさせていただきます。

・この記事を書いたスタッフ

鈴木 伸英

鈴木 伸英

日々の会計業務だけでなく、経営者の想い、会社で働く方々の生活、取引先との関係性などを含めて、“その会社らしい継続・相続” を一緒に考えることを大切にしています。一児のパパで休日は愛犬のポメラニアンと遊んでリフレッシュしています。

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